台湾では、台湾島を自転車で一周する「環島」が人気となっていますが、人気の理由は何でしょうか。また、台湾が自転車大国と言われる理由は何でしょうか。
自転車での環島は、通常、10日から2週間かけて完遂する人が多いですが、ここでは、10日間コースを紹介します。
環島とは
台湾における環島(かんとう、ホァンダオ)とは台湾島を一周する旅行を指し、特に自転車での環島が人気です。環島では、台湾の豊かな自然と文化的多様性を体感できます。
環島のルートはおよそ1,000〜1,200キロメートルで、自転車での環島の場合は、10日から2週間かけて完遂する人が多いです。道中では、壮大な山々、絵画のような海岸線、美しい田園風景、そして賑やかな都市を訪れることができ、また、各地の特色ある食文化も魅力です。
環島は台湾人にとって自己挑戦のシンボルとなっており、観光客にとっても台湾の自然と文化を深く理解するための絶好の機会となります。
自転車で台湾一周が大流行の理由
自転車での台湾一周、通称「環島」が大流行している理由は、美しい自然、整備された自転車インフラ(自転車専用道路や休憩施設)、健康志向の高まり、政府や地元自治体の積極的支援など多岐にわたります。また、2007年に上映された映画「練習曲」もこの流行に大きく貢献しています。
この映画は、若者が自転車で台湾を一周しながら、自己発見と成長を遂げる姿を描いており、美しい映像と音楽が多くの人の心を掴みました。映画の影響で、多くの若者が同様の挑戦に憧れ、実際に環島を行うようになりました。
台湾は自転車大国
台湾は、世界有数の自転車メーカー「GIANT」に象徴されるように、自転車大国として世界中に知られています。その理由を以下で説明します。
世界有数の自転車メーカー、GIANT、MERIDAがある
台湾が自転車大国である理由の一つは、世界有数の自転車メーカーであるGIANT(ジャイアント)とMERIDA(メリダ)の存在です。これらの企業は、品質と革新性で世界的に知られており、台湾の自転車産業の発展に大きく貢献しています。
GIANTとMERIDAはともに1972年に台湾で創業されました。両社は、コストパフォーマンスの高い自転車の大量生産により世界中のサイクリストから支持されるようになり、プロフェッショナルなスポーツ車からレジャー用の自転車まで幅広いラインナップを世界中に提供しています。
さらに、GIANTとMERIDAは地元の経済に大きな影響を与え、多くの雇用を生み出しています。これらにより、台湾国内での自転車文化の普及も促進されており、自転車専用道路などのインフラの整備も進み、一般市民が自転車を利用しやすい環境が整っています。
このような要素が組み合わさり、台湾は自転車大国としての地位を確立しています。
自転車道が整備されている
台湾が自転車大国である理由の一つは、全国的に自転車道が整備されていることです。台湾政府は、自転車道のインフラ整備に積極的に取り組んでおり、安全で快適な自転車環境を提供しています。
主要都市や観光地では自転車専用道が整備されており、初心者から上級者まで幅広いサイクリストが安心して利用できるようになっています。2014年に台湾交通部観光局は「台湾一周サイクリングガイド」を出版していますが、そこには以下の5つのおすすめサイクリングコースが掲載されています。
●羅馬公路(ろーまこうろ)
台湾北部、西は新竹関西・馬武督から東は桃園県復興郷・羅浮に所在することから、両端の地名である「馬」と「羅」の字を取って羅馬公路と呼ばれています。羅馬公路は、約70kmの環状ルートで、アップダウンが続き乗り手にとってはかなり厳しいコースとなっています。
沿道には甘い水蜜桃が売られているので、疲れたカラダに効きます。
●日月潭環潭公路
台湾中部南投県に所在する台湾最大の湖「日月潭」を一周する約33kmの環状ルートです。日月潭環潭公路は、アメリカCNN傘下の旅行情報サイトCNNGoによって「世界で最も美しい自転車道ベスト10」に選ばれています。
水社ビジターセンターから時計回りに走るルートは、湖に近いためおすすめで、ビジターセンターにはレンタサイクル店もあります。
●埔里~武嶺
武嶺は、台湾全土中、車でアプローチできる最高地点で、海抜3,275mに位置しています。台湾地理中心碑のある海抜555mの埔里から武嶺までは、約55km、総上昇高度約2,700mで、傾斜度10%を超えるところもあります。
延々と続く登坂は、台湾でも最高難度となっています。高海抜では防寒対策が必要で、冬には雪が降ります。
また、初めて挑戦する人は、高山病にも注意が必要です。
●安平、七股潟湖濱海巡礼
台南市の安平老街(らおじえ)からスタートし、台江国家公園、七股潟湖を経由して北門区から引き返してくる環状ルートです。沿道では地元グルメや名所旧跡が楽しめます。
●東海岸(花蓮~台東)
東部海岸国家風景区を通る走行距離約170kmの長距離ルートです。補給所や修理店が少ないので、出発前に食料等の準備をした方が良いです。
また、夏はひどく暑く、冬は季節風が強いので難度が上がります。
以上の5つの自転車道は、美しい風景を楽しみながらサイクリングできるため、地元住民や観光客に非常に人気です。
自転車を簡単にレンタルできる
台湾が自転車大国である理由の一つは、自転車を簡単にレンタルできるシステムが整備されていることです。特に注目すべきは、「YouBike」という公共自転車シェアリングサービスです。
YouBikeは、台北市をはじめとする主要都市で広く展開されており、使いやすさと利便性で非常に人気があります。YouBikeのステーションは、都市部の至る所に設置されており、駅やバス停、観光名所の近くに多く見られます。
利用者はスマートフォンアプリやICカードを使って簡単に自転車をレンタルでき、短時間から長時間まで柔軟に利用できます。また、料金も非常にリーズナブルです。
このシステムにより、観光客や地元住民は交通手段として自転車を手軽に利用でき、都市内の移動が便利になっています。
列車にも自転車を載せられる
台湾の旅客鉄道を運営している台湾鉄路管理局(TRA)や台湾高速鉄道(THSR)は、列車に自転車を載せることができるサービスを提供しており、自転車と共に旅行するのが容易です。TRAの多くの列車は、自転車を専用の車両に乗せることができるように設計されています。
特に、観光地やサイクリングルートの近くを通る列車では、自転車専用のスペースが設けられており、簡単に自転車を積み込むことができます。
また、週末や祝日には、自転車専用列車が運行されることもあります。台湾高速鉄道(THSR)でも、一部の列車で折りたたみ自転車を持ち込むことが許可されています。
列車に自転車を載せられることにより自転車旅行者は遠方の目的地まで効率的に移動し、その後、現地でサイクリングを楽しむことができます。鉄道と自転車の連携が、台湾全土でのサイクリングを促進し、自転車大国としての地位を確立する一因となっています。
環島モデルコース
自転車での環島は、10日から2週間で完遂するのが一般的です。2014年に台湾交通部観光局が出版した「台湾一周サイクリングガイド」では、台北をスタートして台湾島を反時計回りに10日で一周するモデルコースが掲載されています。
ここでは、そのコースを紹介します。
1日目(台北→新竹)
【コース】
台北→三峡→大渓老街→石門→関西→城隍廟→新竹
【利用道路】
台3線→県道118号
台3線は省道です。省道は、複数の県や市を結ぶ主要道路で日本の国道に相当します。
【距離】
81km
【高低差】
300m
【みどころ】
・三峡老街
老街(ラオジエ)とは、清朝または日本統治時代に造られた昔ながらの古い街並みのことを言います。三峡老街は台湾で最長といわれています。
・石門ダム
台湾で 3番目に大きな人造湖で、桃園の灌漑、台北盆地の治水、台湾北部の 300万人以上の人々に水力発電と生活用水の供給を行っています。
・新竹の城隍廟
国家三級古跡に指定されており、周囲には小吃(軽食)の店が多くあります。
台湾での古跡は、国家古跡(一級古跡)、直轄市古跡(二級古跡)、県市級古跡(三級古跡)の3種類に分類されています。
【グルメ】
・天然仙草かき氷
仙草はシソ科の植物で、ゼリーなどの原料となります。
・鳳梨酥(バイナップルケーキ)
金黄色のさっくリとした皮で甘酸つはいパイナップルを包んた人気のお菓子です。
・金牛角
台湾版のクロワッサンで三峡老街の名物となっています。
・大渓豆干
豆干は、小さく切った豆腐を布でくるみ、香料と煮てから乾燥、あるいは薫製にしたものです。
・石門活魚三吃
活魚三吃とは一匹の魚を三通りの食べ方で食べるということです。石門貯水池に生息する新鮮な魚をいただきます。
2日目(新竹→台中)
【コース】
新竹→竹南→後龍→通霄→苑裡→大甲→清水→沙鹿→台中
【利用道路】
台61線→台I線→台12線
【距離】
100km
【高低差】
60m
【みどころ】
・後龍好望角風景区
風力発電のための沢山の風車が、台湾で最も密集しています。
・草悟道
台中市中心部にある全長3.6krnの緑の遊歩通で、北は国立自然科学博物館から、南は国立台湾美術館・美術園道まで続く帯状の都市空間。
【グルメ】
・珍珠奶茶
クズイモでできたタピオカをミルクティーに入れた飲み物。
・竹塹餅
豚の脂身な どで作った餡を包んだ、甘さとしょっぱさがクセにな る月餅風のお饅頭。
・大甲芋頭
台中の大甲では、芋頭(タロイモ)が名産です。
・米糕
台湾の伝統的料理の一つで、日本のおこわのようなものです。
・鶏爪
鶏の足です。
3日目(台中→嘉義)
【コース】
台中→彰化→員林→北斗→西螺→斗南→民雄→嘉義
【利用道路】
台1線
【距離】
94.3km
【高低差】
90m
【みどころ】
・彩虹村(台中)
村の壁の至る所に落書きがされて、カラフルで美しい童話の世界に変身しました。作品はすべて旧退役軍人の黄永阜の手によるものです。
・田尾・永靖道路花園(彰化県)
台1線(省道1号線)の花栽培の盛んな田尾と永靖を通る区間をいいます。この道の両脇は夜間でも電照菊栽培の照明がこうこうと輝いています。
・西螺大橋
台湾の濁水渓に架かる鉄橋で、雲林県西螺鎮と彰化県渓州郷を結んでいます。全長1939mの鉄橋で、1952年に竣工した当時は、アメリカサンフランシスコのゴールデンゲ–トプリッジに次ぐ世界第二位の長さでした。
・北門駅(嘉義)
阿里山森林鉄路阿里山線の駅で、1910年開業以来の由緒ある旧駅舎が残っています。その素朴な外観を有する施設は、嘉義市の指定古跡となっています。
【グルメ】
・火鶏肉飯
火雞肉飯は、七面鳥の肉を用いた嘉義市で有名な軽食の1つである。
・太陽餅
台中の名物で、何層にも重ねられたサクサクとした皮の中に餡が包まれた丸いお菓子です。
・肉圓
肉餡をでんぷんの粉で包んで、蒸した後もう一度揚げて作った食べ物で、甘辛ダレを掛けて食べます。代表的な台湾料理の一つです。
4日目(嘉義→高雄)
【コース】
嘉義→水上北回帰線→新営→林鳳営→隆田→(製糖工場)→永康→台南孔子廟→岡山→高雄市
【利用道路】
台1線
【距離】
115km
【高低差】
30m
【みどころ】
・北回帰線太陽館(嘉義)
嘉義県水上郷の北回乕線天文広場は、全世界に16ある北回帰線(北緯23.5度線)が通過する場所です。
・孔子廟(台南)
台南孔子廟は、1665年に創建され翌年に完成された台湾で最も古い孔子廟です。
・彩虹橋燉(橋頭)
台1線に位置するカラフルな橋脚です。
・愛河(高雄)
高雄市の中心を流れる川です。
【グルメ】
・虱目魚(サバヒー)
台湾の重要な養殖魚で、さまざまな料理があります。
・牛肉湯
牛肉スープです。
・羊肉爐
羊肉鍋です。
5日目(高雄市→車城)
【コース】
高雄市→小港→東港→佳冬→枋寮→枋山→楓港→車城
【利用道路】
台17線→台1線→台26線
【距離】
87km
【高低差】
50m
【みどころ】
・高雄国際空港(高雄)
飛行機の離着陸の様子を見ることができるため、近年多くの観光客や市民が集まるようになりました。
・東隆宮(東港)
南部を代表する古刹で、とにかくきらびやかな牌楼(ゲート)が印象的です。
【グルメ】
・桜エビ
東港は台湾北東の⻲山と並んで桜エビの2大漁場となっています。
6日目(車城→台東市)
【コース】
車城→社丹→寿峠→台東達仁→大武→金崙→太麻甲→知本→台東市
【利用道路】
県道199号→台26線→台Il線
【距離】
115km
【高低差】
450m
【みどころ】
・寿峠
台湾屏東県と台東県に跨る南迴公路(台湾省道台9戊線)上にある海抜約460メートルの峠。
・知本温泉(台東)
台湾東部一の美景を持つ観光地です。河床から温泉が涌き出ており、泉質はアルカリ性炭酸泉。
【グルメ】
・臭豆腐
中国南部発祥の発酵豆腐料理で、強烈な臭いと独特の味わいが特徴です。
・米苔目
米で作った麺
7日目(知本→玉里)
【コース】
台東市→初鹿→鹿野→関山→池上→富里→玉里
【利用道路】
台9線
【距離】
85km
【高低差】
300m
【みどころ】
・初鹿牧場(台東)
台東県卑南郷にあり、総面積約70ヘクタールで台湾銀行が経営している国営牧場です。
・池上伯朗大道(台東)
台東県池上郷にある田園の中の小道です。周囲には広大な水田が広がっており、路傍には一本の電桂もないため、見渡す限り果てしがないというのを実感できます。
俳優の金城武氏が航空会社の広告のロケを行ったことで冉ひ注目されました。
【グルメ】
・池上弁当
台東県池上郷で売られている駅弁で、同地産の米を使い木箱に詰められているのが特徴。
8日目(玉里→花蓮市)
【コース】
玉里→瑞穂→富源→花蓮観光糖廠→鳳林→豊田→志学→吉安→花蓮市
【利用道路】
台9線
【距離】
88km
【高低差】
200m
【みどころ】
・北回帰線(瑞穂)
世界には9基の北回帰線標誌が立っており、そのうち台湾には嘉義県水上郷と花蓮県瑞穗郷、豊濱郷靜浦村の3基があります。
・七星潭(花蓮)
台湾の花蓮に位置する観光名所で、美しい海岸線と広大な砂浜が特徴です。
【グルメ】
・扁食
ワンタンのことで花蓮の名物です。
・麻花捲
台湾風かりんとう
9日目(花蓮→礁渓)
【コース】
花蓮駅→蘇澳新駅→冬山→羅東→宜蘭市→礁渓
(「花蓮駅→蘇澳新駅」は普通列車での移動)
花蓮県と宜蘭県の間を南北に走る台9線の一部を蘇花公路といいます。蘇花公路は、台湾でも有数の壮大な景観を見られる道路です。
しかし、山にへばりつくように狭い道路が延びており、落石や大型ダンプの通行、トンネルなど危険な要素が多くなっています。そのため、自転車での環島では、花蓮駅と蘇澳新駅の間は電車利用することが推奨されます。
花蓮駅と蘇澳新駅の区間には、自転車をそのまま持ち込める列車(サイクルトレイン、自転車列車)が走っています。列車は、早朝の4時台から夜の22時台まで、1~2時間に1本程度の頻度であります。
サイクルトレインは、花蓮駅から蘇澳新駅までは、所要時間が1時間30分程度、料金は自由席で$116(台湾ドル、2024年8月現在)となっています。列車の時刻は、台湾鉄道の公式サイトで調べれます。
【利用道路】
鉄道→台9線
【距離】
129km(鉄道100km、道路29km)
【高低差】
40m
【みどころ】
・冬山河森林公園(宜蘭)
各山河上流に位置する緑がいっぱいの森林公園です。森林公園のほか、健康運動場、農芸体験区、児童遊楽区、多目的歩道などがあります。
・羅東文化工場(宜蘭)
モダンで斬新なデザインの文化施設。美術展、手工芸品のワークショップ、特別なイベント会場などに利用されている。
・礁渓温泉(宜蘭)
礁渓温泉は、泉質が炭酸水素ナトリウム泉で、台湾では数少ない平地に湧く温泉です。温泉は、無色無臭で、地表に湧き出る温度は58度、人浴後は皮膚がつるつるサラサラになります。
【グルメ】
・麻糬
台湾風のもちで花蓮の名物です。
・包心粉圓
餡入りタピオカ
10日目(礁渓→台北)
【コース】
礁渓→北宜公路→石牌→坪林茶葉博物館→小格路→碧潭→新店→台北市
【利用道路】
台9線
【距離】
72km
【高低差】
500m
【みどころ】
・坪林茶業博物館(坪林)
台湾初の「茶」をテーマにした博物館。茶葉料理やお茶が楽しめるレストランも併設しています。
・碧潭風景区(新店)
碧潭風景区は、美しい山と水の景色が広がるかつての台湾八景の一つです。碧潭(緑色の湖の意味)に面した山の斜面は奇岩が屹立し、中国の絶景「赤壁」に似ているとして「小赤壁」と称されます。
・台北101(台北)
台北市で–番目立つランドマークで、台湾一の高層ビルです。高さ508m、地上101階で、2010年まで世界一の超高層ビルでした。
【グルメ】
・牛肉麺
牛肉と牛骨を煮込んだスープに麺を入れたものです。
まとめ
台湾における環島とは、台湾島を一周する旅行を指し、特に自転車での環島が人気となっています。その理由は、整備された自転車インフラや環島を取り上げた映画のヒットなど多岐にわたります。
また、台湾は、自転車大国として知られており、世界有数の自転車メーカーがあり、自転車道も多く整備されています。自転車での環島は、通常、10日から2週間かけて完遂する人が多いですが、ここでは、10日間コースを紹介しました。